泣くことと自己治癒力
いっつもいつも明るくて、
ハイテンションなあの子を素敵だなと思っていたあの頃…。
私は、自分のことを好きになれなかった。
だから、あの子を尊敬してもいたんだ。
だけど、ある時から気がつき始めた。
あは↑は↑は↑は↑は↓という笑い声は、
棒読みに近い音をしていた。
線のとんだピアノのような調律で、
「違う、笑っていない!」と感じたんだ。
そう思った途端、ふいに闇が見えた。
幸せそうに、穏かに笑う人の灯りは、優しく照っている。
だけど、ぎらぎらと照りつけるあの子の場合は、
真っ直ぐに見つめた途端に、闇になる。
その頃だった。涙を流さないことが、
明るいわけじゃない現実を知ったのは。
感情に、四季が無い。
即ち、"明るくあることだけを肯定されている世界"とは、
どんなにか暗闇であることだろう。
明るく笑う人は、ストレスが無いとも限らない。
ストレスを見せないことや、誤魔化すことが、
巧い(うまい)…のかもしれない。
感情に四季のあることと情緒不安定は、
繋がりそうで繋がらない。
感情に真夏しかないのも、
情緒が巡らないという意味で、不安定となる。
人の心には、しとしと涙が降ることも必要なのだ。
途端に、片隅へと押しやっていた、
わずかに残る涙の欠片を目の前へとかき集めた。
泣いてばかりも健康的とは言えないが、
貴重なものをゴミ箱に放ってしまうところだった。
そのことが、惜しくなったのだ。
……完全に失くしている場合じゃない。
涙という自己治癒力を失くしたら、
人の心身はどうなってしまうのだろう。
もしかしたら、癌でさえ、
泣けない姿勢が作り出すのではないか。
そればかりではないとわかっていても、
何だか、そんなこともあるような気がしてしまう。
突然、泣かない大切な人に、泣いてもらいたくなる。