涙を忘れてしまった人
涙を忘れてしまうと、見えなくなるものがある。
涙を忘れてしまった人には、伝わらないものがある。
これは、本当にそうだよね。
涙という体の断片にさえ、蓋をしてしまうと、
ものごとを部分的にしか、見られなくなってしまうんだ。
涙の残る人と、涙を忘れた人の見ている世界は、
おそらく、とっても違うものだと思う。
それぞれ、違う世界の中で価値を作って、
その中で、精一杯に生きようとする。
けれども、時々ね、
涙が、異質な世界を繋げることがある。
ホラ、この島からあの島へ行くには、
水があるでしょう?
人間もこれと同じで、
こちらの島からあちらの島へ渡るには、
水が必要なんだ。
もちろん、風を使って飛んでゆく方法もある。
だけど、二人の間に水のある現実は、
変わらないってわけ。
枯れ果てた不毛の大地に、何かの勢いで、
潤った土地からの水が流れ込むことがある。
そうして時間をかけて、また、草木が繁ってもいいじゃないか。
乾いた土は、突然、やって来た養分に驚くかもしれないけれど、
それは、何の変哲も無い、柔らかな自然の一現象なのだから。
あまり人間然とせず、
時には、自然の一部に帰ることも必要だよ・・・。
ところで、不毛の大地では、
四季の変化が見られない。
厳密には注意深く、目を凝らして見えるくらい。
だから、ものごとをよく見ようとしない人には、
乾いたつまらない世界でしかないんだ。
つまらないものだから、賭博に勤しんだりする。
だけどもう一つ、ここで暮らすには、
自分の中の水脈を見つける方法がある。
頑張って頑張ってようやく見つけた水源は、
心もとない量だろうけれど、
焦らずに、ゆっくりとその先を辿ればいい。
やがて、大きな大きな流れに向かうはず。